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Home / OECDのPISAとメディアのセンセイショリズムが教育論争に与える影響

OECDのPISAとメディアのセンセイショリズムが教育論争に与える影響

By Asia Pacific Memo on January 13, 2011

Memo #47

(English translation available here)

By 高山敬太 (Keita Takayama)

2000年以来3年毎に実施されている経済協力開発機構(OECD)のPISA(Programme for International Student Assessment)が、参加国の教育政策に大きな影響を与えている。この国際学力テストは、義務教育終了時点(15歳)の子どもたちの学習に関する幅広いデータを提供することを意図しているが、とりわけテストの平均値を基にした国別ランキングが注目を集めている。国内の研究者、政治家、官僚、コメンテーターらは、現行の教育政策を批判または正当化する道具としてこのランキングを用いるが、とりわけランキングに特定の解釈を与えて、それを社会一般に流布するメディアは、PISAが一国の教育政策に与える影響を大きく左右する。

PISA 2000のデータが公表されて以来、日本の主要新聞各社は自国の15歳のランキングが上下するたびに、それを現行の教育改革への評価指標として報道してきた。PISA2003の結果公表においては、テスト対象のあらゆる科目においてランキングが低下したことを大々的に取り上げ、90年代後半より導入されてきた「ゆとり教育」に疑問を呈した。こうした批判に応える形で、文部科学省は「脱ゆとり」の方向で舵を切り始めるわけだが、実際には、「学力世界トップ陥落」の報道とは対照的に、統計的に有意な低下はreading literacyの一分野に限られていた(8位から14位に低下)。これとは一変して、PISA2009の結果公表においては、新聞各社はランキングがすべての科目において上昇したと報じ、「PISA2003ショック」直後に導入された一連の政策が順位上昇に効果をあげたという文科省大臣の説明を好意的に伝えた。

こうしたメディアの報道は、PISAのデータ扱いに関するOECDの注意書きをまったく無視している。たとえば、2009 PISA Resultsには、「数値が抽出調査を基に算出されたものであるゆえ、参加国間の正確なランキングを決める事は不可能である」と記さているし、統計的に有意な数値差のみを考慮することも過去のレポートにおいて再三強調されてきた。確かに各新聞社が報じたように、PISA2009のreading literacyにおいて、日本の15歳は8位にランクされたわけだが、同時に報告書は、5位と10位の間には統計的に有意な差異は認められないとも記している。よって、PISAのランキングの上昇・下降を基に、現行の教育改革の是非を問うことは的外れである。残念ながら、新聞各社はこうしたPISAデータの適切な理解に不可欠な情報を報道することを怠り、結果として、あたかもオリンピックであるかのように、国のランキングの上下に一喜一憂する世論に加担してしまった。

上述したような報道の実態は、メディアのセンセイショナリズムの問題にとどまらず、広くは、教育政策とその効果に関する短絡的な見方が社会一般に流布している現実をも映している。学力低下論争以来、日本の教育研究者は政策論争に実証的研究の成果を反映させるべく、様々なメディアに積極的に登場してきた。PISAが無用な「学力オリンピック」に堕しつつある今日、研究者の教育論争への直接的な参加はこれまで以上に求められている。

About the Author:

Keita Takayama teaches sociology of education in School of Education, University of New England, Australia.

Links:

  • Takayama, K. The politics of international league tables: PISA in Japan’s achievement crisis debate, Comparative Education, Volume 44, 2008.
  • PISA 2009 Results: What Students Know and Can Do, OECD, Volume 1, 2010.

Related Memos:

  • Misinterpreting Globalization in the Context of Japanese Education Policy by Julian Dierkes, Justin Elavathil, and Takehiko Kariya (Memo #43)
  • Our other Memos about Japan.
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